やっと王子様と再会を果たした頼子ちゃん、けれどカインの手によって王子様は倒れてしまったの・・・。
〜Beauty and Beast〜
頼子は王子の手をつかもうと必死にもがく、しかし王子の身体は重力に遵って落下していくのみだ。
  だが幸いにも王子の落ちた先にはベランダが有り、地面に叩きつけられることはなかった。
  頼子はホッと胸をなでおろすと、一目散に屋根への出入り口に向かって走り出す。
  ――― しかし ―――
  「どこに行くんだミーナ。」
  カインが頼子の腕をしっかりと握り締めていた、頼子は強い力によって引き戻されてしまう。
  「ちょ・・・離してよっ。」頼子は痛そうに顔をゆがめながらカインに抗する、しかしカインは離そうとしない。
  「ミーナ、アイツは死んだ。もう助からない・・・僕と一緒に村に帰ろう?」諭す様に語りかける。
  頼子はカインをきっと睨みつける、カインは頼子の鋭い視線に思わずビクリとなった。
  「あのねぇ!死んでるなんて不吉なこと言わないでよっ!!第一アンタ、あたしのこと諦めたんでしょ?!!」
  頼子はかなりご立腹のようで、語調が荒々しくなっている。しかしカインは動ずることなく続ける。
  「ミーナ・・・僕が君のことを易々と諦めるように思えるのかい?あれは嘘に決まってるだろう?」
  悪びれも無く言ってみせる、しかし頼子にとってその言葉は、苛立ちを募らせるだけであった。
  「・・・最っ低ー!!!!!!」
  頼子はそう言うと、カインの右の頬を思いっきり叩いた。カインの腕はその拍子に離れてしまう。
  頼子はしてやったりといった表情で屋根への入り口に駆け込んで行く、カインは慌てて追いかけた。
  「待て!!待つんだミーナ!!」
  カインの手が頼子の手を掴もうとした―――しかし。
  ズルッ。
  カインは一瞬、自分の身に何が起こったか解らなかった。しかしすぐに、雨のせいで滑ったのだと気づいた。
  しかし、気づいたときにはもう遅すぎた。カインの身体は雨で濡れていた為、滑ったまま転がってしまう。
  「ぅわぁぁぁ!!!」カインは慌てて城の屋根についていた装飾品を掴む、しかし眼下には崖が広がっている。
  カインはごくりとつばを飲み込んだ、このまま落ちればまず助からない。
  「カインちゃん、大丈夫?」
  ふと、聞きなれた声がかかった。妹のキャロラインだ。屋根の上からカインを見下ろしている。
  「キャロライン!!良かった・・・。このままだと下の崖に落ちてしまうんだ、助けてくれ!!」
  カインは慢心の力をこめて片方の腕をキャロラインに差し出す。
  しかし、当のキャロラインは差し出された手を掴もうとはしない。ただ雨に打たれている。
  「おい・・・キャロライン?どうしたんだ?早く助けてくれよ・・・」カインは恐々尋ねる。
  キャロラインはカインの顔をじっと見つめ、笑った。カインもつられて笑いかける。
  「アンタなんか、死んだ方がマシなんだよ。」
  キャロラインは見せていた笑顔からは到底想像も出来ない様な残虐な顔でそう言った。
  カインが「え?」と言い終わるのと同時に、キャロラインはカインの腹を思いっきり蹴りつける。
  カインはそのまま力なく崩れ落ち、崖に向かって落下して行った。
  「バイバイ、あたしの大好きなカインちゃん♪」
  キャロラインはそう言ってニタリと嗤った。
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投稿者後書き
 
   ちょっと「≪世界≫。」に影響受けてますね。
    でもコレは個人的にやっときたかったので・・・。(オイ)
    たぶん次回は感動できます、きっと。 
 
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