大河お父さんが倒れたのは王子様のせいだと言い張るカイン、王子様はどうなってしまうのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


「まっ待ってよ!!どうしてそうなるのさ!!」

頼子はハッと我にかえってカインをせき止める、しかしカインは頼子の言葉に耳を貸す様子はまるで無い。
頼子はカインの行く手を遮り、話しかける。
「王子はそんなことする奴じゃないよ、カインも会えば解かるって。」
しかし、カインは頼子のこの言葉に余計に気を悪くしてしまう。
「キャロライン、ミーナを厩に閉じ込めておけ。」そう言ってスタスタと歩き出してしまった。
「ちょっ!!ちょっと待ってよ!!」頼子は追いかけようとする、しかしその腕をキャロラインに捉まれた。
「・・・放してよ」キャロラインは頼子の言葉に耳を貸す様子は無い、クスリと微笑むと―――。

「あたしね、あんたみたいな子が大嫌い!!」

そう言って頼子の腹に、一撃を食らわした。頼子の意識に霞がかかっていく。

―――《魔法使い》―――

頼子はそのまま意識を失った。


―――ちゃん・・・いこ・・ちゃん―――

頼子の体がゆさゆさと揺れ動かされる、ぼぉっとした意識が次第に目覚めていくのが解かる。

「ライコお姉ぇちゃん!!起きてぇー!!!」

頼子は大声にびっくりして飛び起きる、頼子が倒れていたのは、村にある厩の中だった。
「ライコお姉ぇちゃん!!良かった、死んでなかったんだね!!」頼子に呼びかけていたのは《正義》だった。
「なっ・・・どうしてここに居るの?」頼子は目をぱちくりさせる、《正義》は照れながら口を開いた。
「えへへ・・・ライコお姉ぇちゃんのことが心配で、鞄の中に隠れてたんだ。」
頼子は少し呆れながらも、心強い見方が居てくれることが嬉しかった。
頼子は厩の中を見回す、厩の中の馬たちは興味津々の様子で頼子と《正義》を見つめている。
頼子は《正義》に近づき、そっと耳打ちする。「あのさ《正義》、ちょっとお願いがあるんだけど・・・。」
《正義》は目を輝かせ、「お願い?!!なに?僕なんでもするよ!!」と言いながらピョンピョン飛び跳ねる。
「あのね、この先に煙突のある古い家があるの。そこに行って髪の黒い男の人にここに来るように言って欲しいんだ。」
《正義》は頷き、「解った!!さっそく行って来るね!!」と言って厩の囲いの隙間から飛び出して行った。

―――頼んだよ、《正義》!!―――

頼子は小さな使者に思いを託した。


「みんな!!良く聞いてくれ!!」

カインは村人たちに向かって大声を発する。村人たちは武器を持ち、険しい顔つきでカインを見ていた。
「僕の愛しいミーナの父、大河譲太郎氏が、情け容赦ない野獣のせいで病魔に襲われている!!」
カインは有りもしないことをさも有ったかのようにしゃべり続ける、きっといい政治家になれるだろう。
「野獣を殺さなければ、僕たちに明日はない!!さぁ行こう村人たちよ!!僕らの平和を取り戻すんだ!!」
カインの言葉に、村人たちはけたたましい声を上げて応ずる。カインを先頭に村人たちは森へ進んでいった。

―――カインちゃんの嘘つき―――

キャロラインは最後尾で退屈そうにトボトボと歩いている、彼女にはカインの心理などお見通しなのだ。

―――本当は、王子にあの子を取られたくないだけのクセに。―――

キャロラインは「けっ」と吐き捨てた、それはまるで心の内のわだかまりを捨て去る行為のようでもあった。

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投稿者後書き

第19話です、もうすぐ終わりですねー。
次回、カインちゃん対《魔法使い》様の対決が・・・!!

 

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