王子様様からのプレゼントはなんとドレス、二人の仲はどうなっていくのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


「ごめん、ちょっと遅くなっちゃったね。」頼子は長いドレスの裾を踏まないように気をつけて歩く。
「いや・・・気にしていない」王子もまた、黒いタキシードに身を包んでいる、なぜだか可愛らしく見えた。
頼子は王子に近づき、ぺこりとお辞儀をする。王子もお辞儀をし、そっと頼子の手を取った。
王子と頼子は、マダムの弾くピアノの音色にのせて、ゆっくりと踊りだした。
頼子は踊ったことなど無いので、少し戸惑う。けれど王子が優しくリードしてくれた。
「・・・助けてくれてありがとう」頼子は恥ずかしそうに王子に囁く、王子は「ふん」と鼻を鳴らす、照れているらしい。
頼子はクスリと笑った。
二人はピアノの調べにのせ、踊り続ける。

「ライコお姉ぇちゃん・・・綺麗・・・。」

《正義》がため息と共に呟く、マダムも頷く。
《愚者》はなぜか涙ぐみながら二人を見守っていた、《死神》が優しく肩をなでる。

二人は気が済むまで踊り明かした。


「あ〜〜〜楽しかった!!」

頼子はテラスの柵にもたれかかる、外の空気は冷たく、吐く息は白く漂っていった。

―――そっか、今日ってクリスマスなんだっけ・・・―――

頼子は大広間に飾られたツリーを見やる、大きなツリーだ。綺麗な飾りがたくさんついている。

―――クリスマス・・・か―――

とたん、頼子の瞳に泪が溢れる。懐かしい我が家での、ささやかながら暖かかったクリスマスの思い出が蘇ってくる。

「―――?!!どうしたのだライコ?!!」

王子が慌てて頼子に駆け寄る、頼子は泪をぬぐい、パッと顔を上げる。
「平気平気、なんとも無いよ。」と言って笑ってみせる。
しかし、それでも王子はまだ心配そうである。少し間を置くと、いきなり頼子の身体を抱きしめた。

―――えっ?えっ?えええええ〜〜!!―――

「ちょっ・・・《魔法使い》・・・放して・・・」
頼子はどぎまぎしながらも王子に抗する、しかし王子の腕の力は、頼子を離そうとしない。

「―――家族に・・・会いたいか?」

王子は頼子の耳元で、呟くように話しかける。頼子はバッと顔を上げた。
「・・・どーゆー意味?」頼子はかすかに震えながら問いただす、王子は頼子の身体をそっと離した。

「・・・ライコは《魔法使い》の奴隷ではない
 家族のもとに帰りたいのなら、帰ってもいいのだぞ?」

諭すように語りかける、頼子はぶんぶんと首を振り、「嫌だよ!!離れたくないっ!!!」と言って王子に抱きつく。
しかし王子は頼子の身体を離し、その肩に手を置く。優しく輝く宝石の瞳が、戸惑う頼子の顔を映し出していた。
「ライコよ、家族のもとに帰るのだ。明日、《死神》に村に送り返してもらえ、良いな?」有無を言わさぬ調子だった。
頼子は泣き出しそうな顔で、「・・・うん」と呟いた。

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投稿者後書き

第17話、あのシーンです!!!!
踊ってます!!二人が!!踊ってますよ〜〜♪
あぁ・・・書いてて良かった・・・(阿呆)

 

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