《虫》の脅威から、王子様の手によって助けられた頼子ちゃん、これから二人はどうなっていくのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


「・・・《魔法使い》・・・」

頼子は王子の名前を反芻する、王子は外套を広げ、頼子を包み込む。
「なっなに?!!」頼子はどぎまぎしながら聞く、王子はムッとした顔つき。
「ここにいると、いつ《虫》どもが現われるか分かったものではない。いったん城に引き返すぞ。」
頼子が口を開こうとする前に、王子と頼子は城の中に移動していた。
「・・・嘘。」頼子は茫然自失の表情である、王子は誇らしげに告げる。

「これが《魔法使い》がこの醜悪な姿と引き換えに手に入れた力だ、
 自分の行ったことのある場所に、瞬間移動することが出来る。」

「説明はいいよ、あたしをどうして連れ戻したの?出て行って欲しかったんじゃなかったの?」
頼子は助けてもらっておきながら、少し怒っていた。ここに居るよりは、村に帰りたいのである。
頼子はきっと王子をにらみつける、王子は少しの間を置いて口を開いた。

「・・・《虫》に食われて死にたかったのか?」

頼子はムッと顔つきを険しいものに変える、ふいと王子から顔を背けた。
「あんたなんかに助けられるぐらいなら、そのほうが良かったかもね!」
頼子はそう言って、部屋えとずんずん歩みを進めていった。(ずんずん)

「ハァ・・・ハァ・・・」

一方その頃、頼子の父大河は、《死神》の手によって村に送り返されてから、ずっと寝こみ続けていた。
大河は荒い息を吐き続ける、苦しそうに顔をゆがめていた。
「・・・大河・・・・」《戦車》が顔を覗き込む、こんな時でさえも彼の表情は捉え所が無かった。
「頼子・・・ダメだ・・・より・・・」大河は何度も頼子の名を呼ぶ。

―――頼子嬢は自分の子では無いのに・・・そこまで心配するか―――

そう、頼子は大河の子ではない。大河が昔、道端で捨てられていた子供を拾った―――それが頼子なのだ。
大河はその子供を拾い、育てることにした。彼女について解かっているのは、「水元頼子」と言う名前だけ。
誰の子かも判らない子を、大河は必死になって育て上げたのだ。
もちろん、頼子にはそのことを話してある、けれど頼子は悲しむこともせず、他人の大河を信頼し続けてくれたのだ。
「頼子・・・行くな・・・より・・・こ・・・」大河はその名前を呼び続けた。

「・・・頼子嬢・・・すまない・・・」

《戦車》はただ、生きていることを祈ることしか出来なかった。

 

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投稿者後書き

第15話です、二人の仲はまだ悪いですねー。
でもこれから良くなっていきますから^−^
ぐふふふふふふふふ(壊)

 

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