《虫》と呼ばれるグロテスクな生き物に見つかってしまった頼子ちゃん、いったいどうなってしまうのかしら・・・?

〜Beauty and Beast〜

「いやっ!!こないで!!!こないでったら!!」
頼子は腕をぶんぶん振り回し、近寄ってくる《虫》を追い払う、必死の形相で馬に乗った―――が。
「むみゅみゅみゅ〜〜〜」
頼子が乗ってきた馬の上にも、わんさか《虫》が大量発生している。頼子の顔は青ざめ、口の端がひくひくいってた。
「むみゅみゅ〜〜!!」《虫》は馬の口の中に、にゅるにゅるっと入り込んでいく。
「ブヒヒーーン!!」馬は途端、様子がおかしくなってしまった。頼子に向かって突進してくる。
―――ぶつかるっ!!―――
頼子は目を閉じた。
「大莫迦者!!」
突如頼子に叱責の言葉がかかる、そっと目を開けると―――そこには輝く宝石の瞳を持った王子の姿があった。
「何故避けようとしなかった、あと少しで衝突するところだったのだぞ。」王子はぴしゃりと叱りつける。
気づけば頼子の体は王子の両腕の中にあり、《虫》が上がって来れそうも無い高い樹の上に登っていた。
しかもよくよく見ると、この体勢は、どう考えても俗に言う「お姫様抱っこ」状態である。
「なっ・・・!!離してよっ!!」頼子は恥ずかしそうに顔を赤らめ、王子の腕から逃れようとする。
「あまり動くものではない、この木の枝が折れたら、《虫》どもの居る下に落ちてしまうぞ。」
王子はそっと頼子の身体を離した。
頼子は《虫》をじっと見つめる「あれ・・・何なの?」半眼になりながら王子に問うた。
「《虫》、だ。」王子は短く答える。「それじゃ解かんないよ」頼子は思わず食ってかかる。
王子は「ふん」と鼻を鳴らした後、「《虫》はこの森の界隈に居る下賎な生き物だ。」と説明する。
頼子は顔をひねりながら「あたしは何度もこの森を通ったけど、あんなのは一度も見なかったよ?」と聞き返す。
「当然だ、10年ほど前にすべて死滅したはずだからな・・・他の森に居た連中が住み着いたのだろう。」
王子は右の手を勢い良く横になぐ、王子の手に光の粒が集まり、ギザギザが交互についた変な杖が出てきた。
「・・・なにそれ?」頼子は思わずつっこんでしまう。
「“高貴なる錫杖”だ。・・・少し待っていろ、《虫》どもを掃ってくる。」王子は眼下へ飛び降りる。
「ちょっ!!ちょっと!!」
頼子の引きとめなど気にもせず、王子は《虫》だらけの地上に降下していく。にやり、と不適に笑った。
「かかってくるがいい!!」王子は錫杖を振りかざす、《虫》は奇声を発して消えてしまった。
「むみゅみゅみゅみゅーー!!!!!」
《虫》たちはいっせいに王子に飛びかかる、王子は錫杖を片手で持ち、もう一方の手に光の球を出現させる。
王子は球をマシンガンのごとく無数に発射、《虫》たちに浴びせていく。
「・・・凄い・・・。」頼子はぽかんと王子の戦う様子を眺め続けるしかなかった。
あっという間に《虫》は全滅してしまう、王子はいたって涼しい顔だ。
「・・・凄いんだね、あんた・・・」王子は軽く跳躍し、頼子を抱きかかえ、地面に降ろした。
「あんた、ではない。」王子はいったん言葉を切る、そして頼子のほうを向きながら―――。
「《魔法使い》だ、よく憶えておくといい。」
頼子は少し微笑んだ王子の笑顔に、顔を少し赤くしてしまった。

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投稿者後書き

第14話です、《魔法使い》様大活躍ー♪
贔屓してますよ、えぇしていますとも。
だってカッコいいもん・・・。
そんな訳で次回に続く〜〜。

 

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