王子様に見つかり、お城を追い出されることになってしまった頼子ちゃん、無事村に帰れるのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


「おっ!!ライコちゃぁ〜〜ん!!捜したぜぇ〜〜
 どこ行ってたんだよ?」

《愚者》はピョンピョン飛び跳ねながら近づいてくる、頼子は少し寂しそうに顔を曇らせながら。
「ごめん・・・あたし出て行かなきゃいけなくなったんだ。」
《愚者》は口をあんぐり、《死神》が《愚者》の後ろから現われる。
「本当にごめんね?じゃ・・・」頼子は振り向かないように歩き出す、だがその足を何者かに詰まれた。
足元を見ると、《正義》がひっしと足元にくっついていた。

「やだよ!!!行かないで!!」

マダムが傍でたしなめる、頼子は悲しみを面に出さないようにして、城から去っていった。

「・・・だいたい、あの王子は!!部屋見たぐらいでなんで追い出されないといけないのよ!!!」
頼子は不平不満を口にしながら馬を走らせていく。
頼子を乗せた馬は、どんどん城から離れていく。頼子は口の端をきゅっと噛み締めた。

―――入っちゃいけない所に入ったのはあたしだ―――

頼子は名残惜しそうに城の方を見やる、人々に見放された城・・・けれど、優しい人たちがたくさん居た。
「・・・謝ったら、許してくれるかな・・・。」頼子はポツリとそんなことを口にしてしまう。

―――莫迦、あの王子が許してくれるわけないよ―――

頼子は未練を断ち切るように、馬を走らせる。

「むみゅぅ?」

何かの鳴き声がした、やけに可愛い鳴き声である。頼子は馬から降り、声の方をじっと見やる。

「むみゅみゅみゅ〜〜〜」

可愛い鳴き声の持ち主は、ゴリブリとムカデを足して2で割ったようなグロテスクな生物だった。

「いっ・・・いやぁぁーーーーーー!!!!!!」

「良かったのですか?追い出したりして・・・」マダムが王子に呼びかける。
だが、王子は窓の外に眼を向けたまま、答えようとはしなかった。
マダムは王子のティーカップにコーヒーを注ぐ、そして思い出したような口調で。
「そうそう、最近このお城の周辺で《虫》が出ているそうですよ?気をつけてくださいね。」
マダムは王子の元から去ろうとする。
「・・・おい!!待て!!それは本当か?!!」王子はハッとした顔つきでマダムに問いかける。
マダムは嬉しそうに、「えぇ、本当ですとも。」と答える。
王子は「・・・ちっ!!」と舌打ちすると、部屋を飛び出した。マダムは「気をつけてくださいね」と呼びかけた。

←前 次→


投稿者後書き

第13話、ゴリブリムカデこと《蟲》さん登場です。
私の中の《虫》さんは何故だか可愛い系です、あと《正義》君も(笑)

 

「〜Beauty and Beast〜」一覧に戻る

文芸部に戻る