西の外れにある部屋に入り、綺麗な薔薇を見つけた頼子ちゃん、《愚者》と《死神》に見つかってしまうのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


頼子は薔薇に落としていた目線を引き上げ、部屋全体を再度見回す。クモの巣をかいくぐり、さらに奥へと進んでいく。
(どうしてこんなに汚いんだろ・・・?普通だったら唯が掃除してるはずなのに・・・)頼子は思案顔になる。
まさか、と頼子は思った。

(まさか、王子は城の人にさえ、この部屋を見せたがらない?)

頼子はうなる、身近な人たちにまで隠す何かが有るというのだろうか。
「とてもそんな大事な物があるとは思えないんだけど・・・。」頼子はポツリと呟く、と―――。

ドテン。

こけた、何かに足を引っ掛けたらしい。またも顔面を強打してしまった。
「いたたた・・・今度はなにっ?!!」若干キレ気味で足元を見ると、ホコリにまみれた写真立てがあった。
頼子はホコリを掃い、写真立てを見やる、豪奢な金色の髪の青年が、精悍な顔つきで写っていた。
「・・・誰だろ・・・。」頼子は写真立てを食い入る様に見つめる。―――その時だった―――。

「それに触れるなっ!!!!!!!」

王子の声だった、頼子は慌てて写真立てから手を離す。王子は一歩一歩、頼子の元に近づいてくる―――。

「ここには入るなと言ったはずだ。」

王子は地を這うような低い声で頼子に語りかける、頼子は驚いた顔つきで、
「えっ?!!そうだったの???」と知らないフリ。
王子は輝く宝石の瞳で頼子を睨みつける、嘘は通じない様だ。
頼子は小さな声で「・・・ごめんなさい・・・。」と謝る。
「謝って済むような事ではない!!出て行け!!今すぐこの城から出て行け!!!」王子は勢い良く手を横に薙ぐ。
「そ・・・そんな!!帰り方なんてわかんないよ!!」頼子は地図も無い、道など覚えているはずもなかった。
「うるさい!!!!出て行け!!今すぐにだ!!!!!!」王子は獣の咆哮で頼子を脅す。
頼子はムカッとした顔つきで、「あーそうですか!!!あたしだってこんなお化け屋敷みたいな城もぉこりごりよ!!」
と捨て科白を残して部屋を後にした、ズンズンと自分の部屋に向かっていく。


―――なによ!!ちょっと入ったぐらいで!!!―――

頼子は内心に怒りを募らせながら部屋の扉を勢い良く開け放つ。
「うわわ!!どーしちゃったのよ、ライコ。」唯が驚いた顔つきで尋ねる、頼子は持ってきた鞄に荷物をつめだした。
「どーしたもこーしたも無いよ、あんた達の王子様に出て行けって言われたの!!だから出て行くの!!それだけ!!」
捲くし立てるように一気呵成に言い募る、唯は口をあんぐりと開いた。
「嘘?!!どうして?!!せっかくマブダチになったのに〜〜」唯はふにゃふにゃと崩れ落ちる。
「マブダチになってない!!!」頼子はぴしゃりと突っ込む、唯は寂しげな顔で頼子を見つめる。

「あたし・・・同じ年頃の女の子と話したの・・・初めてだったの。」

頼子は唯の言葉にハッと振り返る。唯は俯いていて、表情を捉えることは出来ない。
「なぁにしてんの!!せっかく帰れるのよ?もっと喜びなさい!!」唯はいつものように、明るく笑ってみせる。
「うん・・・ありがと、行くね。」頼子は少し寂しそうな唯を後にし、城を飛び出した。

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投稿者後書き

第12話です、やっと中盤???
次回はゴリブリムカデが出ます、本当に。

 

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