〜Beauty and Beast〜
「ここは大広間、昔はよくここでダンスパーティーをしてたもんだ。」《愚者》は火の灯った右手で指し示す。
「煌めくシャンデリア、手を取り合う男女・・・う〜〜ん懐かしい」クルクルと回りながら大広間に入る。
「君はダンスより女性の方ばかり気にしていたがね。」と《死神》が釘を刺す。
《愚者》はムッとしながら、大広間を後にする。「次の部屋に行くぞ!!」と先に歩き出してしまった。
―――なんだかなぁ―――
頼子は阿藤快が良く言う科白を心の中で洩らす、良くしてくれる事はもちろん嬉しいのだが・・・。
「お父さんが気になるかい?」《死神》が聞いてくる。
頼子は心の中を見透かされた様な気がして、《死神》の面をまじまじと見やってしまう。
「君のお父さんは私がきちんと村に送り返した、それとも・・・私のことは信用できないかな?」と聞いてくる。
「いや・・・そんなこと無いけど・・・」頼子は口ごもってしまう。
「おいこら《死神》!!なぁーにライコちゃんと
仲良くしてんだよ!!!早くこっち来い!!」
《愚者》が遠くから声を投じる、《死神》は「あぁ」と短く答え、《愚者》の元へと去って行く。
―――信じてない訳じゃない―――
頼子は心を悩ませる。信じていない訳ではない、けれど―――。
―――でも・・・会いたいよ。―――
一人は辛い、寂しい、苦しい・・・これからどれだけの時間、ここに居ることになるか知れないのに。
―――会いたいよ、お父さん・・・。―――
頼子は知らぬ土地で一人で生きていく自身は無かった、けれど、父の為にはこうするしかなかったのだ。
――― オイデ ―――
「え?」頼子は思わず声に出していた、何者かの声が聞こえたのだ。
幸い《愚者》と《死神》は口論してて頼子のことなど忘れている、頼子は声のした方へ歩き出した。
――― オイデ ―――
謎の声は古ぼけた木の扉の前で、ピタリと静止する。そして音も無く消えていった。
頼子は目を疑いつつも、辿り着いた扉に興味津々である。だがその時、ある事に気付いた。
「・・・ここって、西の外れの部屋・・・じゃないよね・・・?」誰も居ないと解っていながらも、疑問系になってしまう。
頼子はキョロキョロと辺りを見回し、誰も居ないことを再確認する。
―――ちょっと覗くだけなら良いよね―――
頼子の中の悪魔の囁きが、ドアノブを握らせる。だがしかし、頼子の中の天使の囁きも負けてはいない。
―――ダメだよ、入ったら殺されちゃう。―――
確かに王子は、『命の保障はしない』と言っていた。
しかし頼子は悪魔の声に負けてしまう、思い切り良く目の前のドアを開けた。
投稿者後書き
かなり遅れました、やっとこさの第10話。
ライコちゃんが向かった部屋にはいったい何が有ると言うのか?!!