ライコというあだ名を勝手につけられてしまった頼子ちゃん、歓迎のパーティではいったい何が起こるのかしら・・・?


〜Beauty and Beast〜


「いっつあしょぉ〜〜〜たぁ〜〜〜いむ!!!!」

「え?え?え?・・・えぇぇぇ!!!!」
頼子は驚きの声と共に後退を試みた、が、唯が邪魔してもと来た場所に戻れそうも無い。
「ささっ!!あなたの席は王子様の反対側よ、座った座った!!」唯が無理やり頼子を席に座らせる。
頼子が席に着くと、唯は手際よくナプキンを首に巻き、フォークとナイフを持たせた。
「遠慮なく召し上がれ♪」唯が示す先にはこれでもかと言わんばかりの豪勢な食事が並んでいた。
反対側の大きな椅子に座っている王子はもう既に食事に手をつけている、大きな手で器用にフォークとナイフを使っていた。
「えーっと・・・じゃあいただきます」一応食べないとお腹が減るため、頼子は食事にフォークをのばす。

(まさか毒は・・・入ってないよね)

そう思いつつも恐る恐るスープを一口。(ごくり)
「・・・美味しい」頼子は今までの人生でこんなに美味しい物は食べたことが無かった。
「当ったり前よぉ!!まさか毒でも入ってるとか思ったわけ?」唯がじろりと見やってくる。
「いやー・・・そんなことは無いけどさ」頼子はごまかす様にもう一度スープを口に運んだ。
「まぁまぁ、綺麗なお嬢さんだこと。お茶はいかがかしら?」上品な女性の声が聞こえる。
この城にもまともな人が居たのかと、頼子は喜び勇んで振り向いた―――が。
「ポ・・・ポットが喋ってる・・・。」頼子はこれまでの経緯からあまり驚けなくなってしまった。
「あらあら、私だってなりたくてポットになったんじゃないんですよ。」
老婆の顔のついたポットが頼子にお茶を入れてくれた。
「私はマダムといいます、この子は私の可愛い坊や。」頼子が手を伸ばしたカップが振り向いた。
「《正義》だよ、お姉さんは?」小さなカップには可愛い美少年の顔がくっついていた。
頼子は口のはじをひくひくさせながら、「み・・・水元頼子」と答えた。
頼子はこの城にまともな人が居るなどと期待した自分に腹を立てながら《正義》(もといティーカップ)に口をつけた。
「くすぐったいよぉ!!もうちょっと優しく飲んで!!」
《正義》が身体を揺らすと、お茶が一滴二滴零れ落ちた。
「坊や、お行儀が悪いですよ。」マダムがたしなめる。
《正義》は少ししょんぼりして大人しくした。
「・・・食事が済んだら、私と《愚者》が場内を案内するよ。」《死神》がメインディッシュを運んできた。
メインディッシュは大きなステーキである、わらじ位はありそうだ。
「ただし・・・ひとつ条件がある。」王子がやっと口を開いた。

「西の外れにある部屋には決して近づくな・・・
 近づけば命の補償はせぬぞ・・・!!!」

頼子は思わずびくりと強張ってしまう。
「まぁまぁ、いけませんよ王子様。女の子を苛めては。」マダムは王子にもお茶を注ぐ。
王子は「ふん」と鼻を鳴らしそっぽを向いてしまった。

―――西の外れの部屋に・・・何かあるんだろうか―――

頼子は気になったものの、聞こうとは思わなかった。入るなと言われた所に行くほど好奇心旺盛でもない。

―――どうせ、ろくなもんじゃないんだろうしね―――

頼子はステージでダンスし続けている《愚者》を見つめながら食事を続けたのだった。

←前 次→


投稿者後書き

やっとこさ第8話です、送るの遅くてごめんなさい・・・。
お詫びという訳ではないですが、マダム&《正義》君登場。
(もちろん役どころはポット夫人とチップ)
次回、ライコちゃんが大変なことに・・・

 

「〜Beauty and Beast〜」一覧に戻る

文芸部に戻る