お父さんと引き換えに囚われの身になった頼子ちゃん・・・。果たしてこれからどうなってしまうのかしら・・・?


~Beauty and Beast~


「さぁ~~こっちが頼子ちゃんのお部屋だぜぇい♪」

《愚者》はぴょんぴょん飛び跳ねながらドアを示す。
古い木で出来た扉が、頼子の前にでんと見えた、恐る恐る扉を開ける。(そぉぉ~~~~)

「ちょっとぉ!!まだ掃除できてないわよ!!」

頼子は声に反応し、数歩後ろに後退してしまう。(ずざざざ)
「なんだよ、お前さんまだ掃除終わってないのか?」《愚者》が呆れ顔で問いかける。
《愚者》が呼びかけた先に居たのはほうきだ、こちらにも顔が付いている。
この顔は《愚者》や《死神》のように美形という訳ではない。
どこにでも居そうな、普通の少女の顔だ。
「唯さん、掃除はいいからこの子を中に居れてあげてくれないか」《死神》はせっせか動くほうきにあたしを指差した。
唯、と呼ばれたほうきは食い入るように頼子の顔を見る、全身じっくり鑑賞した所で口を開いた。
「あーたお名前は?」頼子は戸惑いつつも「水元頼子」と答えた。
ほうきはにっこりと笑って、「そっ!!あたしは碧川唯、このお城の掃除係だったか弱い乙女よ」と自己紹介をした。
ほうきは手を差し出し「よろしくねライコっ」と勝手に握手をした。
頼子は一瞬フリーズしてしまう、がすぐに意識を取り戻すした。

「ちょっ!!ちょっと待ってよ!!あたしの名前は水元頼子!!ライコじゃない!!」

と猛講義をする。
だが唯はそんなことはお構い無しだ、「決まり決まりっ」と嬉しそうにはしゃいでいる。
「ちょっとぉ!!」頼子は怒り爆発の状態である、唯に食ってかかろうとした―――が。

「よいではないか、ライコという名も。」

口にしたのは王子だった、ライコという名前をいたく気に入ってしまったらしい。
「これからお前をライコと呼ぼう、良いな?」有無を言わさぬ声音で王子が聞いてくる。
頼子は助けを求めようと《愚者》たちのほうを見たが、《愚者》も《死神》も王子には逆らえないらしく、賛同の拍手を送っていた。
頼子はガックリと肩を落とし、「いいよ、勝手にして」と力無く答えた。
「それじゃライコ!!今日はあなたの歓迎パーティーよ!!さぁ着替えて着替えてっ」唯が頼子を部屋に押し込み、ドアを固く閉ざした。
《愚者》はなんとかして部屋を覗こうと必死になるものの、王子に捉まれてあえなく部屋を後にした。

「ねぇ、パーティーって何をするの?」頼子は唯に連れられて部屋から大広間に向かっていた。
唯はニコニコと笑いながら「あなたの歓迎よ、言ったでしょ?」と逆に聞き返す。
頼子は「そうなんだけど・・・」と言って口をつぐんでしまう。

―――お父さん、大丈夫かな・・・―――

頼子は歓迎されるのは一向に構わないが、大河のことが気になって仕方が無いのだ。
「ささっ!!扉を開けて♪」唯が扉の前で止まる、頼子はそっと扉の取っ手を引いた。

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投稿者後書き

第八話(たぶん)です。
たいぶと話が進んできたような、きてないような・・・。
ここに来てやっと唯ことフェザーダスター(フィフィ)が登場です。
次回は盛り上がります。

 

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