〜Beauty and Beast〜
「・・・だっ・・・誰なの?」頼子は恐る恐る声の主に呼びかける。
城は静寂と暗闇で包まれている、そのため、頼子はまだ王子の顔を見てはいない。
「・・・この城の主だ、お前の父は無断で城に入った・・・だから今は牢屋に閉じ込めておる。」
王子は一歩一歩頼子に近づいていく。
それを聞いて頼子は、「お父さんはここにいるんだね!!お父さんを出してあげて!!!」
と王子にせがむ、だが王子は首を振った。
「不逞者をタダで出してやるほど、俺は優しくない。解ったらお前もさっさと出て行け。」
王子は冷たく言い放つ、頼子はむっと顔を強張らせる、そしてしばらく考え込むと―――。
「じゃあ・・・あたしがお父さんの代わりになるよ、それなら文句内でしょ?」と言ってのけた。
この科白に《愚者》は小躍りした。王子は少し驚いたが、にやっと嗤い―――。
「良かろう・・・だが、後悔するなよ。」
そう言ってその姿を現した、酷く醜い獣の顔、毛で覆われた身体、身につけているのは青い外套のみだ。
頼子は思わず息を呑んだ、それでも叫ぶ事も、泣く事も、震える事もしなかった。
「・・・娘よ、名は何と言う。」気丈に振舞う頼子を気に入ったのか、王子が呼びかけた。
頼子は胸を張り、「水元頼子っ!!」と答えた。
王子はクスリと笑う、醜やかな風貌の中、その微笑と、宝石のように輝く瞳だけは美しかった。
頼子は王子に連れられて牢屋に辿り着いた、牢屋は暗く、じめじめとした空気が漂っている。
牢屋の中には、大河が眠っていた。すやすやとした顔つきだ、いびきまでかいている。
「どうする?叩き起こすか?」王子が嫌味の濃い口調で問いかける、頼子は首を振った。
王子は「ふん」と鼻を鳴らすと、「《死神》、送ってやれ。」と促した。
《死神》は時計の音を鳴らした、すると頼子たちが入ってきた扉が音を立てて開いた。
扉から入ってきたのは真っ白な色の木馬だ。木馬は身体を揺らしながら大河の脇を通り過ぎる。
すると、大河はどこかへ消えてしまった。
「・・・どーなってんの???」頼子は我が目を疑った、いきなり父親が消えたのだから。
「私にはこの姿になって以来、不思議な力が備わってね・・・安心したまえ、君の父上は村に帰したよ。」
と、送った張本人である《死神》が答えた。
「不思議な・・・力・・・。」反芻するように頼子は呟いた、とりあえず、そう解釈する他無いだろう。
「さぁ〜〜って♪頼子ちゃん、俺について来な。お部屋に案内してやるよ。」《愚者》が跳ねながら言う。
「うん・・・ありがと。」頼子は父の居なくなった牢屋を見つめた、ぎゅっと拳を握り締める。
―――これでいいんだ―――
頼子は自分にそう言い聞かせた。
投稿者後書き
第七話です。お馬さん登場^−^
これからライコちゃんどうなっちゃうんでしょう???