「そ・・・そんな・・・コト・・・」ありません、と語を継ぎたかったが、出来なかった。
暗闇の中、王子の宝石のような瞳が大河を射る、大河は弁解の言葉さえ口に出来なかった。
「大河っ!!」
《戦車》が目を覚ましたのだ、だが彼は王子の存在に気づいていない。
「・・・来るな!!《戦車》!!お前だけでも逃げろっ!!早く逃げるんだ!!」
大河は声の限りを尽くして叫んだ、《戦車》は少しばかり逡巡したが、踵を返す。
「・・・死ぬでないぞ」それだけを言って村へと車を飛ばした。
「・・・いいのかよ、行っちまったぜ?」小さな声が王子に呼びかける。
王子は大河から手を離す、いきなり自由になった大河はしりもちをついてしまった。
「・・・《愚者》、《死神》こいつを牢屋に入れておけ」短くそう告げると、奥の部屋へと消えていった。
一夜明けて朝になった、父親が牢屋の中だとは全く知りもしない頼子は―――。
「・・・お父さん、ちゃんとお仕事してるかな」と、父の帰りを今か今かと待っていた。
「やぁ、ミーナ今日も元気そうで何よりだ♪」カインがいつもの様にずけずけと近づいてくる。
「・・・あのさぁカイン、何度も言ってるんだけど、あたしの名前は頼子!!ミーナじゃないっ!!」
頼子はかなり切れ気味でカインに物申す、カインの事がよほど嫌いらしい・・・。
「酷いなぁ・・・せっかく一晩寝ずに考えたのに・・・」カインは悲しそうに俯いた。
「頼子・・・嬢」
《戦車》が帰ってきたのだ、だが体中がぼろぼろだ。乗ってきたはずの車も無い。
「《戦車》!!いったいどうしたの?お父さんは?!!何があったの?!!」一気に捲くし立てる。
《戦車》は重々しそうに口を開いた。
大河が古い城に入り、そこで異形な者を見た。
その者は大河は城に勝手に入った事に腹を立たらしい・・・。
拙者は大河に言われ、一人逃げてきた。だが帰ってくる途中で巨大な昆虫に襲われてしまった。
それで車を置いて、村へ帰ってきたのだ。
「・・・まるでRPGの世界だね」感想を口にしたのはカインだった、厭きれている様にも見える。
「お父さんは・・・そのお城に居るんだね」頼子がややあって口を開いた。
「・・・行く気か、頼子嬢。」《戦車》が短く聞いた
頼子は答える代わりに立ち上がった、家のほうに向けて歩き出す。
「・・・!!正気かミーナ?!!」カインが頼子を阻もうとする。
だが頼子は考え直す様子など微塵も見せない、カインの面をギロッと睨みつけた。
「当たり前でしょ、あたし以外の誰がお父さんを助けるのさっ!!」威勢よく、そう言い放った。
投稿者後書き
第四話です、大河さんどうなる?!
ライコちゃんもどうなる?!!
あぁ描くのが楽しい☆