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[50] | しかし…何故《魔法使い》はこのような場所にいるのだ?今、《女教皇》は一体…。 |
[51] | 《魔法使い》はそのように思いながらも、愛おしそうな目で幼いライコを見ていた。 |
[52] ライコ | 「あのね、まほうつかいさん。わたしも大きくなったらお空とべるようになるかなぁ?」 |
[53] 《魔法使い》 | 「・・・ああ。そうだな」 |
[54] ライコ | 「ホント?やったぁ!あたしね、お空飛んで、いろいろな国に行きたいの!」 |
[55] | いろいろな国・・・?そんなこと、ライコは一言も言ってなかったが・・・。 |
[56] ライコ | 「そうしたら、いっぱいおともだちつくるの!」 |
[57] 《魔法使い》 | 「友達というものは、そんなにたくさんほしいのか?」 |
[58] ライコ | 「だって、あたしひとりっこだもん。みんな、おにーちゃんやおねーちゃんとか、いもうととかおとうととかいて、おうちでもたのしそうなんだもん」 |
[59] | ライコの顔が、さびしそうだ。そう思って、《魔法使い》が、何かかける言葉を捜す。だが、それからもライコは話した。 |
[60] ライコ | 「パパとママがけんかしてて、あたし、それみてるのがすっごくいやで・・・。でも、おにーちゃんとかがいっしょにいれば、そういうとき、いっしょにいてくれるもん。そうしたら、あたし、がんばれるもん」 |
[61] 《魔法使い》 | 「ならば、何故、その2人を仲良くして欲しいと、願わないのだ?」 |
[62] ライコ | 「おねがいしたよ。クリスマスに、パパとママがなかよくなるように、って。でも、」 |
[63] 《魔法使い》 | 「でも?なんだ?」 |
[64] ライコ | 「おねがい、きいてくれなかったの。プレゼントいらないから、なかよくなって、って。でも、なかよくならなかった」 |
[65] 《魔法使い》 | 「だから、あきらめたのか」 |
[66] ライコ | 「だって・・・。あたしがパパにやめてって、言ったら、こどもはだまってなさい!っておこられたの」 |
[67] 《魔法使い》 | 「なるほど、な」 |
[68] | そう呟いて《魔法使い》は小さく溜息をつく。 |
[69] | ふと気づくと赤い風船が昇ってきている。どこからか飛ばされたのだろう。 |
[70] ライコ | 「ねえまほうつかいさん、あれとって」 |
[71] 《魔法使い》 | 「・・・・・。空を飛びたいのだろう?自分でとればよいのではないか。」 |
[72] ライコ | 「幼いライコは、しゅんとした顔になる」 |
[73] ライコ | 「あたしじゃ、届かないんだもん。」 |
[74] | 幼い瞳が風船を追っている。 |
[75] ライコ | 「……。」 |
[76] | 唐突に、逃げるように、それから視線を外した。 |
[77] ライコ | 「……。」 |
[78] 《魔法使い》 | 「……。」 |
[79] ライコ | 「…いい。……いらない。」 |
[80] | くるりと、風船にも《魔法使い》にも背中を向けてしまう。 |
[81] 《魔法使い》 | 「勘違いするな。今から《魔法使い》が風船のところに連れて行ってやろうというのだ。《魔法使い》が風船のところに近づいたら、直接とるがいい。」 |
[82] | それを聞いて幼いライコの顔は、パッと明るくなった。 |
[83] ライコ | 「ほんと!?やった、ありがとう!!」 |
[84] 《魔法使い》 | 「ふん。」 |
[85] | 《魔法使い》は照れてた顔を隠すように顔をそむけた。 |
[86] ライコ | 「あっ!ふうせんがとおくにいっちゃう!はやくはやくっ」 |
[87] 《魔法使い》 | 「ライコはせっかちだなァ。焦らずともよいだろう?」 |
[88] | だが、風船は遠くへ行ってしまった。 |
[89] ライコ | 「え〜んえ〜ん《まほうつかい》さ〜ん ふうせんとんでっちゃったよ〜え〜ん」 |
[90] ライコ | 「てゆうかなんでわたしのこと「ライコ」ってよぶの??」 |
[91] 《魔法使い》 | 「幼くともライコはライコだからなァ。」 |
[92] ライコ | 「あたしは、ライコじゃなくて、「みなもとよりこ」っていうんだよ」 |
[93] 《魔法使い》 | 「いや、ライコだ。」 |
[94] ライコ | 「ぶー」 |
[95] | 幼いライコは、頬を膨らます。それを見た《魔法使いは》、微笑ましそうにフッと笑った。 |
[96] ??? | 「上手くいっているようであるな。」 |
[97] | 《魔法使い》とライコを、遠目から見守るようにして眺めている者がいる。《審判》達だ。 |
[98] 《力》 | 「上手くいかなければ、《魔法使い》をここに飛ばした意味がありませんわ。」 |
[99] 《審判》 | 「うむ」 |
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