休日のセントラルパークは恋人たちや家族づれ、皆の笑顔でにぎわっている。
今までは、そんな風景をまるで絵を見ているかのように外から眺めているだけだった。
その絵はとても楽しい絵で、見ていると自分も楽しい気持ちになれたけど
ふと、見ているだけの自分に気がついたときは
忘れかけていた寂寥感を再確認していたものだった。

でも今は僕もその絵の中の一部となっている。
新次郎と共に。

〜 きっと、未来への道 〜

「昴さん、あっちの木陰で少し休みませんか?
あ!ホットドックが売ってますよ、食べますか? ぼく買ってきます。
飲み物はコーヒーでいいですか?
ぼくはちょっと苦手…いえ!ぼくもコーヒーで!
それともベーグルの方がいいですか?」
彼と出会って2年、彼と恋人同士という関係になってもう1年あまり
彼は見ているだけでとても楽しい
くるくるとよく表情が変わり、いつでも僕を一番に考えてくれる。
そして…

「寝てしまったのかい?、新次郎?」
簡単な食事をとって、二人で木陰で休んでいたのに、
気がつけば新次郎は眠っていた。
僕の隣でこうして気をゆるめて休んでくれる
それだけで、とても穏やかな気持ちになれる
本当にささいな事。
でもそれだけで、こんなにも幸せな気持ちになれる。
全部、新次郎、彼が僕に与えてくれたもの。
昴は知った、これが幸せというものだと。
だが、この幸せには期限がある。

『全てを捨てて、全てを得た、九条昴という存在』

僕はまた、全てを捨てる事になるだろう。
今の僕の全て、大河新次郎。
僕の身体は、2次性徴にさしかかる前に、成長を止めてしまった。
なぜ成長を止めてしまったのか、正確には分からない。
だがおそらく、自分の高すぎる霊力と戦闘能力が関係しているのだろう
戦闘に最も適した状態の身体を維持するために、 霊力が身体に影響をあたえ成長を止めてしまったのかもしれない
身体が子どものままの僕は当然、初潮も迎えていない。
この身体は、いつか彼が望むであろう”暖かい家族”を与えてやる事は出来ないだろう。
だから僕は新次郎に告白され、恋人同士になった時に決めていた。
別れの時期を。

もうすぐ、その時期がくる。