創作部リレー小説第一回

記憶を失った大河は・・・?

大河 「今日こそ、この思いをあの人に伝えるんだ!!」
カーン、「ホームラーン!!」ひゅるひゅるひゅる、ぱっか〜ん
気がつくと大河は保健室にいた。
保険医 「大丈夫?ボールが頭に当たるなんて不運ね」
大河 「え・・・あれ・・?僕はなんでここに・・・??」
ずきずきと痛む頭に手を伸ばすと、しっかりと握り締めたままの手紙が目に写る。
クシャクシャになってしまったそれに大河は首を傾げた。
大河 「あれ?これは・・・」
保険医 「ずいぶん大事なものなのね。倒れて運ばれてきて今気がつくまで
   ずっと離そうとしなかったのよ」
大河 「大事な・・手紙・・・?」
そういえばこの手紙を渡そうと急いで走っていたんだっけ。でも・・・・一体誰に?
記憶を辿ろうとしてもずきずきと頭が痛くて考えられない。
大河 「そうだ、中身を見てみよう・・」
中にはある人への想いが綴られていた。しかし・・
大河 「なんてこった!宛名がない。」
この字は間違いなく僕が書いたものに違いがないものだけれど・・・
一体誰に当てたものなのだろう。
自分の好きな人の事が綺麗さっぱり記憶から抜けている。とても大事な事なのに!
大河 「・・・宛名ぐらい普通書くだろぉ・・・」
くしゃくしゃといつも以上に髪をかき混ぜてうなるが、
記憶の中に思い人はいまだ浮かんではこなかった。
大河 「ここで一人で悩んでいても仕方がない。とりあえず外に行ってみよう」


新緑の緑が目にまぶしい・・日差しははうららかなのに大河の心はやはり
自分の手に握られた手紙に捕らわれていた。
大河 「はぁ、どうすればいいんだ」
「タ〜イガっ」
大河 「う、うわっ碧川先輩!」
「何よ、そんなにビックリして」
慌てて持っていた手紙を隠す大河。
目敏くその手紙を見つける唯。
「ふーん、何を隠したのかなあ?」
大河 「なっなにも!あっ先輩、僕急いでいるんで・・・」
「ホホホ、この唯様の目はごまかせなくってよ!!」
唯から逃げようとする大河
しかし意外に呆気無く捕まってしまう。
「さ〜て、その手に隠しているのは何かな〜?」
「潔く見せなさい!」
あせる大河!しかし唯からは逃れられない!
ついに手紙を奪い取る唯
大河 「碧川先輩ー、見ないで下さい! 」
「ん〜?どれどれ……え〜っと……」
大河の必死の抵抗も空しく、唯は手紙に目を通してしまう.
「えぇっ!なに?まさかタイガ〜??!!」
大河 「ああ・・・(泣)。」
「そーか、そーか.大河もやっとあのコに告る気になったのね」
大河 「あ、あのコって? 」
そのとき突風が。
「あっ」
慌ててスカートを押さえる唯。その手から手紙が離れた。
大河 「て、手紙が!!待てっ!」
あわてて追いかける大河
舞い上がる手紙、追いかける大河。
「ま、がんばりなよー」
大河 「そんなあ! 」
唯は知らぬぞんぜぬを決め込んだようである。
手紙はふわふわ空を舞い、どこかに飛んでゆく。更に追いかける大河。


片桐 「ん?これは・・・。」
手紙は片桐が拾ったようである。
必死の形相で手紙を追いかけてきた大河は、片桐の手にある手紙を見て、
ギョッとした。
大河 「あわわわ、せ先輩!!」
片桐 「どうした、大河? この手紙がどうかしたのか?」
大河 「そ、それは・・その・・・」
口ごもる大河
大河 「あのっ!それはっ・・・とっても・・・大事な手紙、なんです。
僕にはとっても・・・。」
何故、自分にとって大切なのか、どうしてそんなことを言ったのか、
大河は全く分からなかった。     
片桐 「そうか、びじぬ」
片桐 「そうか、もうなくさないように気をつけるんだよ」
さわやかな笑みを浮かべる片桐。が、そこで突然手紙が不自然に舞い上がる
片桐の顔から笑みが消え、キッと何もない中空をにらむ!
大河 「先輩、どうしたんですか? 」
片桐 「いや、何でもない。それよりも手紙を。」
そういう片桐の左手には大河には見ることが出来ない光を発していた。
大河 「先輩、具合でも悪いんですか?なんか顔色あんまり良くないですよ?」
片桐 「いや、大丈夫だ。気にすることはない。」
顔色が悪くなる原因の精霊はのんきに大河の頭上に浮いていた
大河 「じゃ、先輩。僕はこれでっ。」
大河は手紙を握り締めて走っていった。
片桐 「《愚者》・・・・・・・・・・・。」
≪愚者≫ 「青いねぇ。あんなんじゃ女の子にもてないぞ?俺みたいに
        手慣れていなきゃな。」
片桐 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
バチィッ!勢いのいい放電光の音と共に≪愚者≫の叫びがこだました。


大河 「はあっ、はあっ、・・・・・・。」
大河は息を切らしながら校庭のそばを走っていた。
大河 「これからどうすりゃいいんだろう・・・。」
途方に暮れながらもいつの間にか校舎の中庭に来ていた。
たわいもない話をしながら通り過ぎていく学生たち・・
大河 「はぁ・・・」
安西 「あなた・・・困っているようね・・・占ってあげましょうか?」
大河 「うわぁ!あ、あんざいせんぱいっ!!」
大河の背後に何の気配もなく安西が立っていたのだ。
安西 「いいから・・・行きましょう・・・・・・」
大河 「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして大河は安西に手をひかれて校舎の裏に連れ込まれた。
安西 「じゃあ、早速占ってみるわ・・・。」
大河 「はあ・・・。」
渋々返事をする大河をよそに、安西は淡々と作業を進めていく。
安西 「あ・・・何を占うのだったかしら・・・・?」
大河 「・・・もういいですよ・・・。」
安西 「あら、あなた何か悩み事があるのかしら?」
タロットを一枚手に取り、それを見つめながらつぶやく安西。
当たっている占いに動揺を隠せない大河。
大河 「なっなんのカードだったんですか?」
安西 「これよ。」
安西が示した一枚のカードを見て顔をしかめる大河
大河 「悪魔・・・?」
安西 「そう、これが逆位置で出たわ。もうすぐ悩みはなくなるはずよ・・・。」
大河 「!ええっ?なくなるんですかあ?」
安西 「ええ、そうよ。あとはどうなるか分からないけれど・・・」
水元ライコ 「あれ?安西先輩、大河君…二人でこんなとこで何してるんですか?」
安西 「あら・・水元さん・・・。そちらこそ何をやってるの・・・・?」
水元ライコ 「たまたま通りかかっただけです。」
安西 「そうだわ、水元さん・・・。この前の続き・・・。」
ライコ 「えっ、あ、いっ、いいですっ。先に大河君のほうをっ。」
そういって大河のほうを見た。
ライコ 「ねぇ、何を占ってもらってたの?」
大河 「えっ!?えっと・・・それはその・・・」
ライコ 「言いたくないの?大河君。」
口ごもる大河。
突然、笑い声が響いた。
ライコにしか聞くことの出来ない、その声の主はそこにいた。
《魔法使い》 「ライコよ。タイガは、思念に損傷を受けているようだなァ」
ライコ 「え、なんで? 」
《魔法使い》 「ライコよ。《魔法使い》は、忙しいのだ。ハーッ八ッ八ッハ!」
そのまま姿を消す<<魔法使い>>
ライコ 「ちょっとそれ無いでしょ!陰険つり眼っ!」
水元さん、ちょっと……
誰に向かって怒ってるんだろう・・・と心の中でつっこむ大河。
大河 「せ、先輩・・・?」
ライコ 「あはは〜、気っ、気にしないで!」
その場から去ろうとするライコ。
大河 「待ってください、先輩!」
ライコを引き止める大河。ライコは不思議そうに大河を見ている。
大河 「え、あ、その・・・」
何か大切なことを、先輩に言わないといけないのに、なんなのか分からない・・・。 大河は言い出せずに立ちすくんでいた。
ライコ 「あっ!大河君あぶないっ!!」
大河 「えっ?」
再び大河にボールがヒットした。
ぼこんっ(ボールがヒットした音)
大河 「い、痛い…」
ライコと安西に支えられながら、また大河は意識を失った。
目が覚めると保健室のベットに寝かされていた。
大河 「あれ・・・?」
ライコ 「大丈夫? 」
大河 「水元先輩・・・?」
大河 「あれ?どうして僕、保健室にいるんですか?」
ライコ 「ほら、ボールが飛んできて、それが大河君にあたって気を失ったのよ」
大河はさっきまで自分が何かを思い出そうとしていたことまで、
すっかり忘れてしまったようだ。
大河 「ん〜、なんだっけ・・・」
ライコ 「いいんじゃない?思い出さなくても。そんな大事なことじゃないんでしょ」
大河 「それもそうですね」
ライコ 「さて、そろそろ部室行っこか!」
そういって、ライコは大河の手をひっぱった
大河 「・・・はいっ!先輩!」
大河は少しどきどきしながらも、ライコに引っ張られて部室へ向かって
いったのだった。
数日後・・・。
≪愚者≫ 「なんだこりゃ。どーっかで見たことあったようなー・・・」
≪愚者≫が拾ったものは、大河の手紙だったのだが・・・。
≪愚者≫ 「んー?・・・ま、いっか!それより子猫ちゃんをナンパしに
行こうっと!!」
≪愚者≫はその手紙をぽいっ、と空に捨てていきました。そしてその手紙は、
高くとんでいきました。
片桐 「≪愚者≫ぁーっ!!!どこにいるーっ!!!」
こうして、大河のラブレターは行方知れずとなったのです。

終り

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