【Knowing〜三世を知る者たち〜】

投稿者:鳴神司織さん

「《運命の輪》、どうしたの」
 あたしは驚いて、苦いものでも噛んだような顔の彼女に訊いた。
「いいえ、大したことではないわ」
 いつになく冴えない顔色。抑揚もどこか一本調子で、投げやりな印象を与える。
一体それのどこが「大したことではない」というのだろう。
 あたしは長くて邪魔な赤い髪を右手でひとまとめにして口を開く。
けど、《運命の輪》が口を開く方が微妙にはやい。まるで、あたしの行動を知っていたかのよう。
−−いや、知っているのだ、実際。
「《女教皇》のことよ」
「−−あぁ、それであたしのところ、なわけね。大丈夫よ、あのコ……うぅん、『あたし』は」
「えぇ、知って、いるわ。理解(わか)っているわ……」
 顔を少し背け、首を振る。漆黒のしなやかな髪が、輪郭を彩る。そして、「ご
めんなさいね、《女帝》。あなた今からフェーデよね、ライコちゃんと」
「そ☆ 懐かしい『八割人前』サンとね」
 彼女はあたしという未来(いま)を知っているからといって吹っ切れた−−わけじゃない。
ただ、今『水元頼子』のことを話題に出来る程度には立ち直っているのだ。
(剋い、んだ、とっても)
 あたしは目の前に広がるヨルという虚空に瞳を向ける。そうして、一度だけ瞬く。
「じゃぁ、そろそろ行くね。あたしは水元頼子と、あの時代で邂逅する人たちのこと、
見届けたいから」
 すべて、知っていることなんだけど。
「いってらっしゃい、《女帝》」
「いってきます」
 知っているフェーデの結果を考えると、なんだか莫迦みたいな挨拶だ。
 もちろん、『負け』る気はない。
 あたしは時を翔た。

 白の精霊が消えたあたり。そこを彼女はじっと見つめていた。
 永遠のような長さ。
 瞬くほどの刹那の。
 そのどちらでもある沈黙のあと、「きょき」のような声音で、一言だけ呟く。

       あとに残るのは、
              耳が痛いほどの静寂(しじま)だけ。
                                END


投稿者後書き

初っぱなからごめんなさい。お目汚しだぁぁぁぁっ、という声が聞こえてきたら、それは確かにワタシのものです。
あ、司織さんどしましょこんな駄作、っていうのも。
↑こんなこと言ってますが、もったいないので結局出します。これ、夏休みの自由研究の小説書いてる合間に出来たものです。天から天啓がおりてきたのか(天恵?)、ものの三十分で出来てしまったという驚愕作品。
皆さんのものより数段、レベルが低いですが。
そうソウ、もう一つお詫び。「きょき」の漢字がでないんで、意味が分かりづらくなってしまいました。
もう恥でナイアガラの滝に飛び込みたい(笑)です。
野郎ども(?)、撤収だ!

部長のコメント

大人な女性二人ですね!この二人はまた独特な雰囲気持ってますよね。いい感じにその雰囲気が現れてるんじゃないかと思います〜v
あと表現がなんだかとっても詩的で素敵ですv

 と、ところで「野郎ども(?)、撤収だ!」ってどこに?!どこに撤収するんですかー?!とツッコミ入れたくなっちゃいました(笑)

副部長のコメント

全てを知っていて、それでも前に進む2人。この2人のこういう雰囲気大好きです!
見送るだけしか出来ない、許されない《運命の輪》の辛さが伝わってきて。幸せにな
る為に前を向き続ける《女帝》の強さが感じられて。
とても素敵な小説をありがとうございました♪
撤収取り消し!!現状待機!!(笑)

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