投稿者:流那さん
星のきれいな夜、街を光が埋め尽くした。
しかし、この光にきずき、目を覚ました者はいないだろう。
なぜなら、この光は栄えある運命のタロットの精霊が現れる時に発する光だからだ。
光の中から現れた天使のような翼を持つ精霊はすぐ霊格をかくし彼女の目的地である、あるアパートの一室に向かった。
(あれ、先着?)
彼女の目の先には空の色のマントをはおった精霊がいた。彼は、霊格を隠している彼女にきずくことなく、その部屋のベットに横たわる少女に語りかけている。
「ライコはなぜ《魔法使い》の過去を知っているのだ、なぜ《魔法使い》に隠し事をするのだ?俺の…俺の事がそんなに信用できないか?」
そう言って彼はいたたまれなくなったらしく部屋から飛び出て行った。
(そっか…今日は)
『そうだろうね。なにしろあんたもプロメテウスだったんだからね』
(あの時、今のあたしのことで口論したんだよね。昔のあたしは今のあたしに嫉妬してたから。)
ダチョウだれかがあたし…水元頼子に言った言葉が思い浮かんだ。
(あの時花村さんのことで自覚したんだ)
《恋人たち》との最初のフェーデ。初めて《魔法使い》に会って、片桐先輩が殺されて、あの場所で花村さんが泣いてて…思い出した記憶はとどまるすべを知らないかのように浮かんでくる。彼女は嫌な記憶を追い払うかのように頭を振りゆっくりとその部屋に入って行った。
そして、いとおしげにその涙に濡れたほほをさわり、中身のないカードをにぎりしめている少女に語りかけた。
「行ってくるよ。ラスプーチンは止めなくちゃならないから。でもあたしの運命は変えるよ。死にたくはないから。あたしはプロメテウスだから…改変するよ、してみせるから。だから、幸せになりなさい。」
そして、ここにはいない《魔法使い》にむけて
「もう会えなくなっちゃうのかな。この娘…水元頼子を大切にしてあげて。」
そしてまた少女に
「これから大変な事がいろいろあるけど、希望を捨てちゃだめ。あんたの周りには頼りになる人がいっぱいいるから。…行ってくるね。」
そして彼女の部屋を出て行った。出ていくとき愛してるだから…と口が動いた気がしたが、定かではない。
* *
「頼子〜!朝よ。」
いつもと変わらない朝。
変わったのはあたしの謹慎がとけて今日から学校に行くこと。
唯や大河くんの追求をさけるために速く行こうと思ってること、だけ。あとは片桐先輩に《愚者》のこと。大変だ。一日がんばろう。
そういえば不思議な夢をみた。《魔法使い》とあたしの嫌いなあの女があたしに「幸せになりなさい」って言って去っていった…。
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