【6月の晴れた日に】

投稿者:水月桜さん

教会の上で、鐘が鳴る。
6月の気持ちのいい青空に響いている。
日のあたりのいい控え室で、唯は時間が来るのを待っていた。
先ほどまで居た両親も、ホールに行って、父親は、教会の入り口で、カチコチになってい
るのだろう。
鏡の前に立ってみた。
背の高い自分に良く合う、シンプルで落ち着いたデザインのドレス。
35の今の自分に良く似合っている。

コンコン
「はい、今行きます」
教会の進行係の人が時間を知らせに来たのだろう。
振り返って、ドアの方へ行こうとして。
カチャリと扉が開いた。
明るい色の髪がまず見えて、誰かに良く似た笑顔の美少女が入ってきた。
続いて、金髪で美形の長身の男性。

「ウソ、・・でしょう?」
声が震える。
その場からもう動けなかった。

「おめでとう、唯」
少女は、もってきた花束を差し出す。
「すっごくキレイ。やっぱり唯は美人よね。
いいなぁ」
震える手を、少女に向けて伸ばした。

「ラ、イコ・・・」
少女が抱き返す。
「唯。
ほんとにおめでとう」

「来てくれるなんて、思わなかった」
もう涙が止まらない。
あの再会からどれだけ経ったのだろう。
「親友の晴れ舞台だもん。どんなことしたって来るわよ」
「・・ありがとう。
すごくうれしい」
「そんなにないたら、お化粧落ちちゃうのに。
ほらぁ、<<魔法使い>>もなんか言ってよ」
「花嫁は花婿の前で泣くものだ」
ふんと、<<魔法使い>>はそっぽを向いた。
「・・・浪漫主義者め」
少女が毒突く。
唯がようやく笑って顔を上げた。
「そうそう、紹介するね。
この人でなしがあたしの好きな<<魔法使い>>。
高校の時も会ってるよね」
「そう!!コミケでね」
二人で大笑いしてから、唯は男性の方に向き直った。
「お久しぶりです。ライコと来てくれて嬉しいわ」
「・・・協力者だからな」
「二人とも式には出てくれるんでしょ?」
「もちろん。唯のだんな様見たいし」

「花嫁様。お時間です」ドアの外から声が掛かる。
部屋から出るとき、6年前誓った通り、とびきりの笑顔で振り返った。
「最高のプレゼントありがと!!」

バージンロードを父親の手に引かれて歩いてる時、ふと思った。
(あら、ジョウったら振られちゃったのかしら・・・?)

帰り道。
「<<女教皇>>はそんなに花束が好きなのか?」
「これは特別なの。花嫁からこのブーケをもらえた人が次に結婚できるって言うジンク
スがあるんだから」
「・・・・」

この時の<<女教皇>>の言葉が<<皇帝>><<女帝>>の結婚式にいたったかど
うかは、運命の神様だって知らない。


投稿者後書き

留学中で、一番大事なテスト週間に書いてしまいました。(TT)
いったん思いついたら、もう止まらなくって2時間ほどで書いてしまいました。
1995年・・・とセットで読んでいただけると嬉しいです。
初投稿なのでどきどきしてマス。

部長のコメント

この作品みて、思った事は「安心」です。よかったね、唯〜!
あの原作の終わりでかなり切なく思うと同時にこれから唯はどうなっていくんだろう・・と思っていたところに答えをもらったような気持ちです。(もちろんこの答えってのは人によって違う訳ですが)

副部長のコメント

おめでとうっ!唯っっ!!幸せになって本当に嬉しいです。
ライコ(《女教皇》)来そうだよね。《魔法使い》も逆らえないだろうし(笑)
ライコにとっても唯にちゃんと《魔法使い》の事紹介したかったんだろうなぁ。ちゃんと紹介された方もすごく嬉しいもんね。
最高の笑顔で誇らしげにバージンロードを歩く唯の姿が浮かぶようです♪
本当に幸せなお話をありがとうございました♪

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